子どものこころとからだのケア

目次:

第9回 「アメとムチ」のしつけは正しい?
第8回 いじめの「周辺」について考える(下)
第7回 いじめの「周辺」について考える(上)
第6回 子どもが不安を感じたときの対応
第5回 子どものやる気と動機づけ
第4回 「期待」と「ピグマリオン効果」
第3回 「ほめる」ということについて
第2回 子どもに対する関わりの大切さ
第1回 震災報道に際しての子どもの心理的なケア

 

 

第3回 「ほめる」ということについて

Posted by on 4月 7, 2014 in Column | 0 comments

2011年7月1日

 

≪「ミラーニューロン」の作用≫

このたびは、「ほめる」ということについてお話をさせていただきたいと思います。私ごとですが、小学生のころから高校野球の全国大会をずっと観戦し ています。ここ数年は、海外にいながらも、インターネットのおかげでリアルタイムで試合の臨場感を感じることができ、便利な世の中になったと実感していま す。これまでの高校野球観戦の中で、例えば、絶叫型の選手宣誓から、手作りの心温まる選手宣誓に変わってきたり、栄養のありそうなものをとにかくたくさん 食べればいいというような食事の仕方から、専門家の指導に従ってスポーツ医学や栄養学に基づいた食事のとり方に変わってきたり・・・など、いろいろな変化 を実感しています。中でも大きく変わったと感じていることは、スポーツ根性型の怖くて厳しい指導者が少なくなって、ほめ上手な指導者が増えたことではない かと思っています。これは心理学の見地からいっても、いい傾向だと思うのです。

2007年の夏の全国高校野球選手権大会で、佐賀北高校が公立高校として、11年ぶりの優勝を遂げたことが記憶に新しい方も多いかと思います。『涙 の数だけ大きくなれる!』(木下晴弘著、フォレスト出版)によると、佐賀北高校の選手たちは、試合中に常に相手チームをほめていたとのことです。相手チー ムの選手のヒットに対して「ナイスバッティング!」、相手チームの投手の奪三振に対して「ナイスピッチング!」などといって、声をかけてほめていたそうで す。佐賀北と対戦して破れたチームの選手は次々と佐賀北のファンになり、勝つたびに佐賀北はそういった応援者を増やして、最終的に全国優勝を果たしたとい うことが書かれてありました。著者の木下氏は、その理由として、「ミラー細胞(ミラーニューロン)」のパワーを挙げていました。

「ミラーニューロン」は、実は1996年に発見されたばかりの新しいもので、詳しいことはまだわかっていないのですが、言語、共感、他者の意図の理 解などと関連があると言われています。著者の木下氏は、相手が「ありがとう」と言ってくれたら、自分にも「こちらこそ、ありがとう」という気持ちがわいて くることが「ミラー細胞」のはたらきによるものであると述べています。例えば、ほめられた相手チームの選手は、ほめてくれた佐賀北ナインを応援する。佐賀 北ナインも、そうやってたくさんの人から応援されていると思うと、なおのことパワーが出る・・・・といったことです。そのようなプラスの相乗効果は、まさ に「ミラー細胞」の効果ではないか、ということでした。私は、このように相手チームの選手をほめるような指導をしていた佐賀北高校の監督さん自身も、おそ らくほめ上手な指導者であり、ほめることで選手のやる気を引き出してきたに違いないと思っています。

 

≪肩の力を抜いて、ほめ上手に≫

ほめることで、やる気を引き出す。この考え方には一理あると思います。逆説的な話になりますが、よく周囲から叱られたり注意されることが多い子ども は、自信を失ってしまったり、自尊心が傷ついてしまったりして、ますますやる気が出なくなってしまい、その結果、ますます叱られるようになるという話は、 実に多いのです。ひどく叱られたことで、「今度こそ挽回するぞ!」「頑張って見返してみせる!」というように、やる気をみせる子どものほうが少ないとも言 われています。何かの行動を学習させるには、「歩き回ったらダメ!」「うるさい!黙りなさい!」「散らかさないの!」と言って、否定的な言葉や大声で叱っ て教えるよりも、「座っていることができてエライわねぇ」「電車の中でしずかにしてたね。すごいわ」「おかたづけできたね。よくやったわ」と言って、ほめ ることの方が、ずっと効果的だと言われているのです。

「ほめることが全然なくて、叱ることばかり」ということだってあるかもしれませんが、ほめるに値することは何か必ずあるはずなのです。親の気持ちに 余裕がない場合は、子どもの悪い面に対して、つい目が向いてしまったり、些細なことに対しても、叱りがちになってしまったり・・・ということが多いようで す。「できて当然のことだから」、「そんなことはだれもができていることだから、ほめるに値することではない」といってほめないでいるのが普通になってい たり、子どものよくない行動に対して否定することや叱ることが習慣になっていたりしている場合には、一度、立ち止まって深呼吸をして、肩の力を抜いてみる のもいいかもしれません。心に少しでも余裕ができれば、子どもの行動のいいところや、少しでもできているところを見つけて、笑顔でほめてあげることができ ると思います。

「ほめること」と「甘やかすこと」はイコールではありません。叱責や注意が必要な時はもちろんありますし、状況次第では叱らなければなりません。そ の一方で、ほめて子どものやる気を引き出すことは、とても重要なことだと思っています。大人だから、親だからといっても、完璧な人は誰ひとりだっていませ ん。「こんな些細なことで子どもを厳しく叱ってしまって、傷つけてしまった。かわいそうなことをしてしまった」と、子どもの寝顔を見ながら反省させられる ことは誰にだってあります。そういう試行錯誤を繰り返しながら、どんどんほめ上手になっていければいいなと(子育て中の私も)思っているところです。

香港日本人補習授業校スクールカウンセラー 合田美穂 (精神保健福祉士)